ブライダル

一生に一度であろう結婚披露宴を行った。

 

元々私は結婚式を行いたいと思っていない人間だった。

 

私みたいな人間がドレスなんか似合うわけがない、恥ずかしい。

自分が勝手に結婚するだけで人を付き合わせるのが申し訳ない。

そんな風にずっと思ってた。

 

幼少期は「お嫁さんになりたーい」なんて思っていた気もするが今となっては羞恥心と自分への自信の無さ・卑下の気持ちから結婚はしても結婚式をするつもりは一切なかった。

 

彼もそんな私の気持ちを尊重して(実際多額のお金が動くというのもあり)特に式の話はなかったが両家の親が親族への紹介を含めてせめて披露宴だけでも行うべきという意見のもとそれなら披露宴会場で一緒に式も行おうという話でまとまったのだ。

 

その話後、私は妊娠した。

まだ先の話にしようとしたが急遽出産前の結婚披露宴のスケジュールが立ったのだ。

 

ダブルウエディングというものらしく、2つの意味でおめでたいと式場のスタッフさんは言っていた。

 

実際最初は式場へ行ったり打ち合わせは楽しかった。

キラキラした異空間は幼少期の憧れそのものだったし、自分と恋人はなにか特別な事をこれから行おうとしているという期待があった。

 

だが毎週行われる打ち合わせや多数の人との連絡の取り合い、加えて妊娠したこの身体はどんどん知らない身体へ変化し心身ともに付いて行かなくなった。

 

これがマリッジブルーとマタニティブルーというものなんだろうな。

 

やっぱりドレスは着たくない。

皆に会うのが恥ずかしい。

幸せってこの多忙を指すの?

仕事も終わりの目途が立たないし、上手く仕事が回せない。

今までできていた事が妊娠したから出来なくなるのは他人にとって迷惑だろう。

なんて引き戻りたい気持ちでいっぱいだった。

 

それでも式場のスタッフはやはりプロだ。親身になって応援してくれ、気持ちを持ち上げるように支えてくれた。

 

先に結婚した友人も未婚の友人も「貴女のドレス姿がみたいの」と励ましの言葉をくれた。「自分の為だと思って憂鬱になるなら、この式に参加するみんなの為に仕方なくドレスを着る。くらいの気持ちでいたらいい」そんな言葉をくれた人もいた。

 

結婚式前日は式場からプレゼントとして近くのホテルに宿泊し、いつもと違うちょっとした小旅行気分で私はもう既に満足していた。

 

当日ドレスに着替えてメイクされている時も自分が花嫁という感覚も余り無かったし、私自身緊張はなく隣にいる彼の幸せいっぱいの笑顔と同じくらい強張った仕草が妙に愛おしくて、披露宴会場の扉を開けるまで結婚式を行うという気持ちは然程起きなかったのが正直な所だった。

 

披露宴が始まる前の短時間に親族紹介を行い、久しぶりに会う親族に簡単な挨拶を済ませた。

 

私たちはチャペルでも神社でもなく、披露宴会場内での人前式を行った。ご参列してくれた皆の前で互いに結婚を誓い合う形式のものだ。

 

チャペルのように誓いのキスをするわけではなく

神前式のようにお堅い形式でもなく

 

自分たちの為に来てくれた皆が楽しめるような所謂ゲスト参加型人前式にしたかったのだ。

リングリレーや結婚証明書作成や誓いの言葉・承認の拍手など、ゲストの人が参加することによって初めて成立する式の内容だ。

 

結婚式を挙げる上で私は「自分たちの為に来てくれるのだから精一杯ゲストが楽しめる式にしたい」というコンセプトだけは折れなかった。

 

実際自分が結婚式に御呼ばれして、本当に自分たちが幸せである雰囲気・自分たちのしたい事だけを詰め込んだ式というのは分かるし高い金銭を払って一生に一度の贅沢という意味で誠に正しいと思う。

 

でもだからこそ来てもらうゲストへの感謝だけは譲れなかった。

プランナーにも「もっと自分のやりたいことあげてください。」と言われたが、私のやりたいことがそれなのだから仕方ない。彼もそこは理解してくれ私の希望にそう話し合いをしてくれた。

 

ざわつく会場の扉ごし固まる彼を少しでもリラックスできるようにたわいもない冗談を話していた。

 

音楽が流れ、扉が開いた瞬間

見知った沢山の顔と止まらないカメラ音 一瞬のスローモーション

「ああ、これが結婚式か」と思った。

 

一歩歩けば右から左から「おめでとう」と声をかけられ、沢山の人の笑顔を見ながらの入場は本当に天国のような気持だった。

 

自分の為に来てくれたと思うより皆の笑顔が見れる事が何より幸せだった。

友人が牧師役として人前式を進めてくれ、結婚を誓い合い、ゲストの人に参加してもらいリングリレーを行った。

 

皆が繋いでくれたリボンを通った指輪を互いに指につけ合い、沢山の拍手の中私たちは結婚式を行う事が出来た。

 

その後ケーキ入刀や彼の緊張した挨拶などをおえ、止まることなく皆が列を作り挨拶に来てくれた。よく見る顔も久しぶりの顔も、もっともっとみんなの笑顔が見たくてあっという間にお色直しの時間になってしまったという記憶。

 

内緒のお色直しもサプライズの登場も会場の歓声で皆が楽しんでくれていると思えたし、本当にご飯食べる間もなく披露宴を終えた。

 

式がすべて終わって「あっという間だったな」と「楽しかったな」という気持ちとは裏腹にどっと疲れがこみ上げた。いつもなら感じる胎動も式の中ではあまり感じずにいたのに終わった途端ものすごく強く胎動を感じたり、子どもも私も少し緊張の中にあったんだろう。なんて考えていた。

 

結果的に結婚式挙げて楽しかったし、隣にいる旦那様はまた結婚式したいなんて言う始末で二人共、参加してくれた皆のお蔭で一生に一度の最高の結婚式が出来たなぁ。って今は思える。でももう一生ドレス着たくないという気持ちで今はいっぱいです。

 

やっぱり私の幸せは他人によって構築されるんだとエゴのように再認識できました。

さあて出産頑張らなきゃなぁ~~~

 

考え直したいことや思い返したいこと

もっと本質的な事を考えるまでの率直な感想だけここに記録しておこう。